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「イギリス?」
うっすらと笑いを浮かべたフランスの顔がすぐ目の前。
ゆっくりと、やさしく、けれど答えを強いるように俺の名を呼ぶ。
居心地の悪さに身をよじれば、背中に冷たい壁の感触
「なぁ、イギリス?」
顔のすぐ横につかれたフランスの手が、すっと俺の髪に触れた。
撫でるでもなく、髪を結くでもなく、ただただ触れて。
「…違う」
「何が?」
「嫌いだ」
「だから、何?」
感情のこもらない、むしろ無表情と言った方がいい笑顔を浮かべて、フランスが問いかえす。
繰り返される問答。
お互い、相手の真意などわかりきっているのに。
「お前なんか大嫌いだ」
言い慣れた台詞は、するりと簡単にこぼれでた。
触れそうなほどに近いフランスの顔をまっすぐに見つめる。
変わらない笑みを作る口元が、ほんの少しつりあがった気がした。
「嘘」
フランスの長い指がゆっくりと俺の顔を降りていく。
最初は頭、次は耳元、そして首筋。
「だってお前俺のこと好きでしょう?」
からかうでもなく、かといって真面目でもない。
不思議に乾燥した声音でフランスは言った。
そして、今度こそ本当に、にや、と口元を歪ませて。
「嘘吐き」
違う。
嘘吐きはお前だろう。
俺が認めることを、望んでなんかいないくせに。
心の内の反論は言葉にせず、ただただ無言で視線を返す。
間近に迫る青の瞳に写る自分が、ひどく濁って見えた。


07/10/8